吉田酒造店

『手取川』『吉田蔵u』

白山の恵みと伝統が紡ぐ、未来へ続く吉田酒造店の地酒

白山の麓で、150年以上紡がれる地酒の系譜

吉田酒造店は明治3年(1870年)、石川県白山市・山島地区で初代が酒造りを始めたのが創業の始まりです。この地域は白山の雪解け水に恵まれ、かつては多くの酒蔵が軒を連ねる“米どころ”でしたが、現在では吉田酒造店が唯一その伝統を受け継ぐ蔵となっています。

長年にわたり地元で愛されてきた酒「手取川」は、加賀の風土に寄り添った味わいを大切にしながら進化を続けています。2020年には20年以上親しまれた「吉田蔵」ブランドを刷新し、より地元産原料と自然との共生にこだわった新ブランド「吉田蔵u」を立ち上げました。

7代目・吉田泰之氏のもと、「料理の一歩後ろで寄り添う酒」「百年後も残る酒」を目指し、伝統と革新を融合させた歩みを続けています。白山の恵みとともに歩んできた150年以上の歴史は、これからの地酒の未来へとつながっています。

白山の恵みと風が巡る地で

吉田酒造店がある石川県白山市は、豊かな自然に恵まれた場所です。すぐそばには霊峰・白山がそびえ、山からの風と日本海からの風が交わることで、夏でも涼しく風通しの良い気候が広がります。車で山や海へも約15分の立地で、自然の恵みを日々感じられる環境です。

この地域は「発酵のまち」としても知られ、味噌や醤油、ぬか漬けなどが古くから作られてきました。特に有名なのは、ふぐの卵巣をぬか漬けにした珍味。毒を持つ部位を、長年の知恵と発酵の力で食べられるようにしたもので、酒の肴としても親しまれています。

豊富な雪解け水は地中に染み込み、長い年月をかけて湧き出る「百年水」として酒造りに使われています。この澄んだ水と地元で育てられたお米が、吉田酒造店の酒の基盤となっています。

伝統と革新が調和する“モダン山廃”

吉田酒造店の酒造りの軸は、「山廃仕込み」という伝統的な製法です。自然の力を活かし、添加物を使わず、手間を惜しまず造る昔ながらの手法で、石川県の能登杜氏から受け継がれてきました。特に「吉田蔵u」シリーズはすべて山廃仕込みで、「手取川」シリーズも今後全量山廃化を進めています。

ただし目指すのは、いわゆる重厚な“クラシック山廃”ではありません。吉田酒造店が追求するのは、伝統を現代に再構築した“モダン山廃”。発酵設計や仕込み配合、衛生管理を徹底的に見直し、雑味を抑えた透明感のある酒質に仕上げています。米や水の風味が素直に感じられ、料理の一歩後ろで寄り添うような味わいです。これが吉田酒造店らしい、静かで美しい個性となっています。

使用する米の約8割は蔵の近隣で栽培されたもので、今後はすべて石川県産に切り替える方針です。酵母には北陸で使われてきた「金沢酵母」を採用し、仕込み水には白山に降った雪が長い年月をかけて地中を流れた「百年水」を使っています。原料も技法もすべて地元に根ざし、この土地を映し出す酒を目指しています。

“和”と“自然”が生む、やわらかく温かい酒

「和醸良酒(わじょうりょうしゅ)」——“和をもって良酒を醸す”。
吉田酒造店が大切にするこの言葉には、蔵元・吉田泰之さんが師事した杜氏・山本輝幸氏の教えが込められています。酒造りは“ものづくり”であり、作り手が楽しく互いを思いやる環境が、酒のやわらかさにつながると考えられています。

さらに吉田さんは、地元・白山市の自然を映す酒を目指しています。白山に降り積もる雪がやがて手取川を潤し、その恵みを飲む人に感じてもらいたいと願っています。白い山に抱かれた自然豊かな土地の風土を映す一本を醸し続けています。

20代から70代まで、多世代かつ多様な背景を持つ造り手たちが、まかないを共にし、時に宴を開きながら酒を醸す。人と自然の“和”が、心に残る味わいを育んでいます。

自然環境を守り育む未来の酒造り

吉田酒造店は、自然に負荷をかけず質の高い酒を造ることを目指し、酒造りの方向性を見直しています。特に力を入れているのが、添加物を使わず自然発酵を活かす「山廃仕込み」への全面移行と、環境にやさしい貯蔵温度の追求です。従来のマイナス温度帯の冷蔵ではなく、10〜15度の適温で熟成させることで、ワインのように自然な味わいの変化を楽しめる日本酒を目指しています。

また、科学的なものを一切添加しない独自製法のナチュラルスパークリング酒の開発にも挑戦中です。これは熟成が可能で長期保存にも耐え、従来の日本酒の価値観を超えた新たな可能性を拓きます。

さらに、気候変動の影響を受ける白山市をはじめ全国の自然環境を守るため、酒造りを通じた環境問題の情報発信や地域と連携した持続可能な取り組みも進めています。自然豊かな土地の恵みを生かしつつ、時代に合った酒造りで未来へつなげていくことが吉田酒造店の願いです。

蔵元:吉田泰之

2020年に創業150年を迎えると同時に7代目蔵元に就任。東京農業大学で醸造学を学び、卒業後は山形県の出羽桜酒造で2年間の酒造り修行、さらにイギリスやアメリカでの研修を経て、2011年に吉田酒造店に入社。2017年からは杜氏として蔵をまとめ、「地酒本来の姿に立ち戻った、ミライに繋ぐ酒造り」をテ-マに、モダン山廃で造る地酒を再構築。並行してソ-ラ-シェアリングの導入や白山手取川ユネスコ世界ジオパ-クと共に白山を守る活動も行っている。2024年からは能登半島地震で被害を受けた酒蔵の支援活動として「能登の酒を止めるな!」プロジェクトを始動中。

 

杜氏: