浦里酒造店

『浦里』『霧筑波』

小川酵母が息づく、茨城・つくばの酒蔵

茨城の風土を映す、二つのブランドの系譜

浦里酒造店は、1877年(明治10年)に創業した茨城県つくば市の老舗酒蔵です。初代蔵元が分家し、この地で酒造りを始めたのがその起点でした。初期の銘柄は「福笑」。昭和の普通酒全盛期には安価な酒を中心に製造していましたが、需要の低下とともに厳しい経営環境に直面します。

転機となったのは、5代目蔵元(現蔵元の父)が山形の銘醸蔵・出羽桜で修業を積み、新ブランド「霧筑波」を立ち上げたこと。特定名称酒へと舵を切り、吟醸酒や純米酒にいち早く取り組んだ結果、「霧筑波」は地元茨城で広く親しまれる銘柄に成長しました。

6代目の浦里知可良氏は、東京農大卒業後に出羽桜や研究機関で研鑽を重ね、蔵に戻って蔵元兼杜氏として新たなスタイルを確立。2020年には「浦里」ブランドを立ち上げ、地元産の米・水・酵母・麹菌のみを使った日本酒として、県外への発信も担っています。
「霧筑波」と「浦里」の2本柱で、地元と全国をつなぐ酒を醸し続けています。

科学と自然が共存するつくばの恵み

浦里酒造店のある茨城県つくば市は、最先端の研究施設が集まる“研究学園都市”でありながら、豊かな自然と農業の風景も広がる土地です。蔵のある市西部、筑波山のふもとは静かでのどかな田園地域。広大な関東平野の一角に位置し、芝生や米の生産が盛んな地でもあります。特につくばは芝の全国シェアの約半分を占めるなど、農業が根付く誇り高い土地でもあります。

この恵まれた環境の中で、筑波山系の伏流水を仕込み水として使用。軟水ならではのやわらかな水質が、酒にも穏やかでしなやかな風味を与えています。原料米には茨城県産の酒米を積極的に使用し、現蔵元が戻った当初は3割ほどだった使用比率は、現在では6割まで増加。地域の農業と酒造りの未来をつなぐ想いが、1本1本に込められています。

筑波の水と「小川酵母」が織りなす香味の妙

浦里酒造店の酒造りにおいて欠かせないのが、「小川酵母」への深いこだわりです。茨城県で発見され、のちに「協会10号酵母」となったこの酵母は、バナナやメロンを思わせる穏やかで華やかな香りと、酸味が控えめで柔らかな味わいが特長。現杜氏・浦里知可良氏は、発見者の名を継ぐ者としてその魅力を最大限に引き出すべく研鑽を重ねています。

酵母の個性を引き立てるため、麹づくりにも工夫を凝らしています。麹は「突き破精(つきはぜ)」という、麹菌が米の表面を覆わず部分的に、かつ米の内部深くに入り込む状態に仕上げることで、少数精鋭の麹菌による繊細でクリーンな香りを実現。この製法により、まるで“大人のメロンジュース”のような、香り高く美しい酒が生まれます。

さらに、麹菌には地元・茨城の「丸福もやし」製を使用。酵母・麹・米という酒造りの要において地元産素材を積極的に取り入れ、風土とのつながりを大切にした酒造りを実践しています。

感性とデータで紡ぐ、茨城の魅力ある酒

浦里酒造店の杜氏・浦里知可良さんは、修行先での二つの教えを胸に酒造りに向き合っています。一つは「向上の一路に終点なし」。技術に終わりはなく、日々学び続ける姿勢を大切に。もう一つは「良い酒はまぐれ。そのまぐれを引き寄せる努力と、再現するための記録が大事」という教え。

浦里さんは、仕込みごとの状態を細かく記録し、感覚だけに頼らない酒造りを実践しています。とはいえ、迷ったときに頼るのは直感。経験と知識を積み重ねた末に導かれる“勘”こそ、最後の決め手だといいます。蔵元の中で若手にあたる彼は、感性とデータの両面を磨くことで、経験の差を少しずつ埋めようと挑戦を続けています。

“酒どころ”のイメージがまだ浸透していない茨城だからこそ、風土や農家の想いを酒に込め、地元の魅力を伝えたい。感性と科学を両輪に、やさしく癒すような味わいの酒を今日も丁寧に醸しています。

茨城から全国へ、未来を拓く酒造り

浦里酒造店の蔵元兼杜氏・浦里知可良氏は、「茨城の地酒をもっと全国に広めたい」という強い想いを持って酒造りに取り組んでいます。その中心にあるのが、新たなブランド「浦里」。地元の米・水・酵母・麹菌だけを使い、茨城の魅力を体現する酒として、日本を代表する銘柄へと育てたいと考えています。

また、弟が岩手や地元の農家で米作りを学んでおり、将来的には蔵として米作りにも関わっていく計画です。耕作放棄地が増える中、地元の農地を守り、米から酒造りを行う体制を目指しています。

さらに、研究学園都市つくばの特性を生かし、大学や研究機関と連携した共同研究も行っています。乳酸菌の研究や酒粕を原料に麹菌を培養してお肉を作る「菌肉(きんにく)」プロジェクトなど、酒造りを超えた挑戦も進行中です。

伝統と革新のバランスを大切にしながら、地域とともに、未来に向けた一歩を着実に踏み出しています。

蔵元:浦里 浩司

1991年茨城県つくば市生まれ。 東京農業大学 醸造科学科 卒業後、出羽桜酒造や渡邉酒造、(独)酒類総合研究所での修行を経て浦里酒造店に入社。令和元年に杜氏に就任し、蔵元杜氏として酒造りに従事している。1952年に小川知可良氏が分離した茨城生まれの吟醸酵母 小川酵母を使用した酒造りに情熱を注ぎ、醸造理念「小川酵母を極める酒造り」を掲げた新ブランド「浦里」を立ち上げる。南部杜氏の伝統技術をベ-スに、近代の吟醸造りを落としこみ、目指す味わいは“ニュ-・クラシック”。令和3年には日本三大杜氏のひとつに数えられる南部杜氏の自醸清酒鑑評会にて史上最年少の首席に輝く。

 

杜氏:浦里知可

1991年茨城県つくば市生まれ。 東京農業大学 醸造科学科 卒業後、出羽桜酒造や渡邉酒造、(独)酒類総合研究所での修行を経て浦里酒造店に入社。令和元年に杜氏に就任し、蔵元杜氏として酒造りに従事している。1952年に小川知可良氏が分離した茨城生まれの吟醸酵母 小川酵母を使用した酒造りに情熱を注ぎ、醸造理念「小川酵母を極める酒造り」を掲げた新ブランド「浦里」を立ち上げる。南部杜氏の伝統技術をベ-スに、近代の吟醸造りを落としこみ、目指す味わいは“ニュ-・クラシック”。令和3年には日本三大杜氏のひとつに数えられる南部杜氏の自醸清酒鑑評会にて史上最年少の首席に輝く。